私は、生きている意味が見出せず、時折自殺することを考えてしまいます。どうしたら良いでしょうか? | |
BPDとは?
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境界聖パーソナリティー障害(borderline personality disordr: BPD)は、強い苦痛や重大な社会的障害をもたらす。一般人口の1-2%がBPDの基準を満たすと推定される。BPDは男性よりもじょせいで診断されることが多い。
BPDの基本症状は、情動不安定と衝動性、対人関係の不安定さである。患者は、怒りや抑うつ等の強烈な、そして極端に変化する感情を示す。また強い退屈や白けの感覚、内的な空虚感を訴えることも特徴だ。衝動行為には、自殺未遂や、自傷行為等の自己破壊的なものが多い。
Reference:林直樹医師、都立松沢病院精神科部長、「境界性パーソナリティー障害」、『今日の精神科治療ガイドライン2010年版』精神科治療学Vol.25増刊号、星和書店 |
BPDの人の対人関係
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対人関係で特徴的なのは、極端な変化、不安定さである。他社に対する理想化と価値の切り下げの間を行き来することや、実際の(または想像上の)見捨てられる体験を恐れて、それを防ぐために死にものぐるいになることが特徴である。
BPDの人は、重要な人物の喪失、分離や様々な欲求不満といった出来ごとに非常に敏感に反応する。それによって彼らの自意識は不安定となり、自分の目標や価値観、自己感覚に自身を持つことが出来ないといったアイデンティティー障害が持続することが多い。
Reference: |
治療の基本的な考え方
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BPDの治療では、しばしばパーソナリティーの一部と考えられる特性、もしくは患者にとって長年慣れ親しんできた特性が問題にされる。それらには容易に取り除くことが困難であり、徐々に歯科改善しない性質がある。しかしだからと言ってそれを悲観的に捉えるのではなく、むしろ徐々に改善していくことが自然なBPDの回復だと捉えるべきである。
先ず医師と患者が信頼関係を創り、共同作業でじっくりと取り組み、衝動的行動をもたらした悩みについて考え、生き方を見直すことが肝心。患者のパーソナリティーに関することなので時間はかかるが、患者の自己認識、内省を深めることにより、重症例でも6年間で7割が治癒する。
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心理社会的治療プログラム
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Linehanが開発した弁証法的行動療法は、1年間以上の集団技能訓練と個人面接により?源氏知的で冷静な自己観察と現実認識の技法、?感情統御技術、?実際的な対人関係技法を習得する。重度の自己破壊的傾向を示すものや、非内省的で直ぐに行動にでる傾向のある患者に有効である。
BatemaとFonagyが開発した精神分析的デイケアは、週2回の集団療法と個人両方からなり、自分の周りの人の行動がその考えや気持ちといった心理的過程から起こることを理解する能力を養う療法である。この療法は、非適応的な対人関係のパターンの原因を理解し、それを変えていこうとする患者にとって有効だと考えられている。
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自殺未遂者の6割を占める境界性パーソナリティー障害とは? | |
境界性パーソナリティー障害(BPD)とは?
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境界性パーソナリティー障害になると、言葉や行動の捉え方が偏って感情をうまくコントロールできず、他人に依存し過ぎる等人間関係が不安定になりがちになる。空虚な気分が続いてしにたくなったり、衝動的にリストカットや摂食障害、向精神薬などの大量服用などで自分を傷つける行動を起こしたりする。思春期から35歳以下の若い人に多く、女性が男性よりやや多い。
米国の研究では全人口の0.7-2%が診断基準にあてはまるとされているが、もともとの気質や性格と区別が難しい。多くが鬱病やパニック障害等の他の性疾患を併発しており、正確に診断されないケースもあるという。
東京都立松沢病院の林直樹・精神科部長は「うつ病と診断され、処方された向精神薬を全部飲んでしまうような患者が、実は境界性パーソナリティー障害もあることが多い」と説明する。
Reference:長倉克枝、2011、「境界性パーソナリティー障害」日本経済新聞2011年1月15日号 |
リストカットは実際に自殺に繋がり易い
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リストカットは等の行動は、対人関係の不安や人とのつながりを保つためのと見られがちだったが、最近では、実際に自殺に至るリスクが高いとの指摘がある。松沢病院に入院した自殺未遂の経験がある患者155人のうち、56%が境界性パーソナリティー障害と診断された。3年間の追跡調査では、何度も搬送されて自殺に至るケースが約1割あった。
「境界性パーソナリティー障害患者の自殺率は1割ほどでうつ病とほぼ同じだが、うつ病などを併発すると更に自殺リスクが高まるようだ。」(林部長)
Reference: |
弁証法的行動療法が有効
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早期発見と早期治療が重要だ。症状を和らげるための薬を飲んだり、カウンセリングや精神療法を受けたりする。薬は抗鬱薬と睡眠薬ん度を組み合わせて治療を受ける。
現状では、米国で開発された精神療法、弁証法的行動療法が最も治療効果があるとされる。国内で同療法の臨床試験をした心理士の石井朝子さんは「生きるためのスキルを学び、実際に体験して獲得していく方法」と述べる。臨床試験では、対象22人全員に症状の改善が見られたという。
弁証法的行動療法は、先ず、数人のグループで講義のようにして対人関係や感情を調節する方法を学ぶ。同時に個人カウンセリングで足りない部分を補う。管所が衝動的な気分になった時などに電話でカウンセリングをすることもできる。
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医療者のチームを創る必要
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同療法を実施する長谷川メンタルヘルス研究所の遊佐安一郎所長は「患者は感情調節がうまくいかない場合が多いが、この治療ではうまく感情を調節できるようにしていく」と説明する。
ただ精神科医や看護婦、作業療法士、臨床心理士など複数の医療者がチームを組んで実施する必要があり、「今の日本の医療体制では実施するのは難しい」(林部長)
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家族の会も発足
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08年には専業カウンセラーの辻松雄・代表が中心になり、国内では始めて、境界性パーソナリティー障害の家族の会が発足した。
月1回会合を開き相談や勉強会などを実施している。辻代表は「患者は多いにも関わらず、治療が難しく患者や家族には情報が足りない。病気に対する周囲の人たちの理解も必要だ」と説明する。
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